クラスで目立たない女子が集まって何やらコソコソとはしゃいでいる。 どうやら本の内容で盛り上がっているらしい。聞くつもりはなかったが会話が耳に入った。
この本どうしたの。こっそり買っちゃった。 やっぱりBLは良いよねぇ。この受けの顔とかヤバイよ、超萌える。 私は攻めが好きだな、この時の顔とか超鬼畜でかぁっこいいんだよねぇ。 鬼畜に攻められながら喘ぐ受けとか、あぁもう本当かわいい。

「どした、キョン。もンのすごく微妙な顔してるぞ」

「いや、何でもない」

聞くつもりはなかった。忘れよう。心のブラックボックスへ今の会話の内容を押し込む。忘れろ俺。忘れるんだ。
前立腺ってさぁ、女の子にはないんだってね。ええ、男だけなの? そうそう、しかも刺激されると超ヤバイんだって。何ソレぇ。 女の子とエッチするよりずっと気持ち良いらしいよ。うっそマジで。

「……へえ」

「どうしたの、キョン。突然独り言なんて言っちゃって」

「いや、何でもない」

授業の合間の休み時間の終わり、教師が入ってきた。谷口と国木田が自分たちの席に戻っていく。 教室の隅で盛り上がっていた女子も解散し、席に付いた。

それから数日たって、用があって図書室に来た時。新刊が並ぶ棚の隅に同性愛について書かれた本があった。 本の中の貸出票を見ると女子の名前がずらりと並んでいた。同じクラスの女子の名前もある。 興味本位でパラパラ捲ると美少年がどうだ同性愛の歴史がどうだと書かれていた。うへえ、とさらにページを捲る。 すると前立腺について書かれた項目に目がいった。


「そんな訳で」

「はぁ」

「なあ古泉、前立腺を刺激されても誰もが気持ち良いわけではないのだそうだ。 何も感じないという人も居るらしいぞ」

お前はどっちだろうな。

「ちょうどいま誰も部室に居ない上に暇だから、確かめさせろ」

「やめてください、冗談でしょう」

腕を掴んだ途端に暴れ出した古泉を押さえつけて、もう一言。

「安心しろ、挿れるのは指だけだ」

( あ。 )

俺の言葉に、困惑しきったたようなブチ切れたような怯えているような、そんな顔。 の、古泉の背景に少年漫画によく使われる電撃トーンが見えた。ような気がする。いや確かに見えた。

( 擬音でいうなら、ピシャーンッ!、だな。 )

ショックで硬直した古泉を脱がすのはとても大変で、 ズボンと下着をケツの割れ目が見えるくらいまでずらしたところで面倒になり、そのまま放置して先に帰宅した。

その後、古泉の前立腺についてはもうどうでも良くなったのだが、 漫画を読んでいる時に背景であの電撃トーンを使われているのを見つけると、あの、 困惑しきったようなブチ切れたような怯えているような顔で固まった古泉を思い出すようになった。



『電撃』
08/11/29