SOS団の副団長こと古泉一樹に、辞書を貸すことになった。 辞書を忘れてしまったので申し訳ないのですがお借り出来ませんか、とあの古泉に言われて、 後ろで女子達が、何で谷口なのよぉ!とキィキィ言っている。 今日は辞書を使う授業がなく、キョンも国木田も試験前だからといって持って帰っており、 不精にロッカーに放りっぱなしにしていたおれが貸すことになったのだが。 ( きったないんだよな、おれの辞書。 ) 勉強が好きではありません、興味がありません、と言わんばかりに余白に悪戯書きをしてある。 あの古泉にまさか自分が貸すことになるとは思っていなかったので、 せめて悪戯書きを消してから貸せば良かったと後悔した。のだが。

ありがとうございました、助かりました。その言葉プラス爽やかな笑顔と共に帰ってきたおれの辞書。 その目次の、現国の時間に描いた猫の絵…の下に、見覚えのない筆跡で 『かわいいですね』と小さく書かれているのを見つけた。

「……おい、キョン」

「どうした」

「おれは不覚にもトキメいたぞ」

「…………は?」



『辞書』
08/12/1