ねえ、せんせい。

どうした、きり丸。

おれ、成長したでしょ。

身長が?

そうじゃなくて。いろいろと。

うん?

おれ、わらってるよ。あいつらといっしょにさわげるよ。

…………。

せいちょうしたでしょう。もう、こどもじゃないですよ。

……そんなことを言うのは、まだまだ子供な証だ。

ふふ。

なに笑ってんだ。

だってせんせい、あまえさせてくれないから。

こういう時のお前は、本当には甘えてこないって知っているからな。



横で眠る子の寝顔を眺めていると、ふと何年も前の会話を思い出した。
あの時まだ十の子が、もう自分は子供じゃないと言って笑った。
その子が今日眠る前に、またあの時のように、もう子供じゃない、と言った。
もう十五になりました、あれから本当に成長したんです、俺は大丈夫です。
そう言って、背が伸びて声変わりをし凛々しくなったその顔で、笑った。

ふふ。

なに、笑ってんだ。

だって先生、相変わらず、甘えさせてくれないから。

言っただろう。こういう時のお前は、本当には甘えてこないと知っているんだ。


明日この子は、任務で戦地へ赴く。忘れられないあの場所へ。
戦で失った故郷に、明日、人を殺しに行く。



『ノスタルジィ』
08/12/13