昨日はごめんね、行かれなくて。どうだった、楽しかった?

散々だった。

あはは。これ、二日酔いに効くよ。

助かる。飲みすぎて頭いてぇ。

あれ、痣できてる。また喧嘩したんだ。

なにを観るかで揉めたんだ。

そんなことで殴り合うなよ。

あいつが悪い。

もう文次郎の家の時は行くのやめる?

…………。

ん? 行くの?

へ? あ、いや、その。

なになに、何かあったの?

……あいつの、部屋の天井、が……。

はぁ? 天井?

あぁもう!でけえ声出すな、頭に響くだろ。

あ、ごめん。


***


カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しくて目が覚めた。見慣れない天井、狭いベッドの上。 何だか酒臭いなぁと思いながら身体をぐぐっと伸すと、自分の首の下に腕が差し込まれていることに気が付いた。 恐る恐る横を向くと、とても近くに潮江の顔があった。初めて見る潮江の寝顔を硬直したまま見つめる。 ようやく、これはヤバイ、と頭が動いて咄嗟に起きあがろうとした身体を、潮江のもう片方の腕に抱き寄せられた。 まるで抱き枕のように、抱き締められている。動けない。横も向けない。帰れない。動きたい。横は向きたくない。帰りたい。

( なんでこんなことに。よりにもよって、こんな、酒臭いギンギン野郎と! )

止まない心臓の音を少しでも消したくて、ぎゅうと胸に手を当てる。しかしその努力も虚しく、 潮江の息が首筋にあたり心臓はさらに音高く鳴り始めた。
酒臭い部屋で、温かい腕の中、ひたすら天井を見つめていた。


***


ねえねえ、文次の部屋の天井って何か模様でもあったっけ。

は? 普通の天井に決まってるだろ。模様のある天井って、どんな金持ちだ。

やっぱりそうだよね。うーん。

何だ、どうした。

いや、留三郎が、文次の家の天井を気に入ったんだって。

はぁ? 何で。

さあ。



『天井』
08/12/28