少年と少女が船から去って半年とちょっとが過ぎた。
帽子を被った青年はこそりと船から抜け出して一人、月を見上げていた。
(まっ暗い空に、一つだけある青白いおつきさん。) 月には船から去った2人の名前が刻まれている。大きな大きな、相合い傘。 ( あいつら、戻ってくるかな。 )いつか2人一緒に、帰ってくるのだろうか。 ムーンドギーは持ってきていたタオルケットを頭から被った。

静かな夜。少し肌寒かった。闇色の空に青白い月、背後には我が家である月光号が佇んでいる。 真っ暗だ。船は、消灯時間のために全ての電気が消されて完全に静まり返っていた。 少し前までいつでも敵襲に対応出来るようにと廊下やコクピットなどの電気を消すことなど、絶対になかったのに。 これが平和というものなのだろうな、と月に照らされた月光号を見上げた。( ……ん?)

ブリッジの展望スペースから誰かがこちらを見ている。動かない。 誰だろう、と目を細めてみても暗くて顔までは分からなかった。( 彼も、 )

あそこに一人で立っている彼も、あの月を見ているのだろうか。 自分と同じように、同じような思いを、少しでも考えているだろうか。( そんなこと、 )

あそこに立っているのが“彼”だといい。ホランドという名の、もうすぐ父親になる男だと、いい。 月を見て永遠の愛に憧れて自分もいつかとても大切な人とあんな風に 壊れることのないものに愛を描きたくてもし本当にそう出来たらどれだけどれほどどんなに 幸せだろうかと想像してそうなったらいいなそうしたいなと自分が強く願って止まない相手だと、いい。

( ホットミルクを飲みたい。 )タオルケットをたぐりよせる。少し風が冷たい。
( あの人だったら、いい。 )あの人だったなら、最高に、幸せ。

月色のホットミルクをあの人と一緒に飲めたらいいなとタオルケットの中で思った。



『手の届かない、見上げた、愛』
爾炉さんリクエスト 「最終回後の話」 アンケートにご協力ありがとうございました。(小説のタイトルはお好きに換えてくださって結構です。)