夜。そっとドアを開けて中を覗く。部屋は暗闇だった。
ドアの隙間から音をたてずに身体を滑り込ませた。

彼はいつものように、大きなベッドにトランクス一枚で眠っていた。 息を殺して彼の寝息を確認してからベッドに近づく。 暗闇に目が慣れて彼の顔がぼんやりと見えるようになった。 侵入者であるムーンドギーは、物音をたてないよう気を付けながら静かにベッドの端に腰掛けた。

スゥスゥ、という寝息が聞こえる。裸の胸もそれにあわせて上下している。

彼の、ホランドの胸にそろりと横顔を乗せた。
耳がちょうど心臓の位置に当たっていて、トクントクン、という音が聞こえる。
肌の暖かさを感じながらそれからしばらくの間、そのままの体勢で居た。

目を閉じて自分の胸に手を当てる。彼の心臓のリズムより少し早く脈打っていた。

時計の音に似た音を聞きながら、いま彼が目を覚ましたらどうしよう、と考えた。
きっと彼は驚くだろう。そして言うのだ。どうしてここに居るんだ、と。

( まだ起きんで…、もう少しだけ――、 )

頬に触れる彼の微量な胸の毛がくすぐったくて、笑いたくなった。
そうして思う。あぁ、なんて幸せなんだろう。

このまま眠ってしまいたい。
心臓の音が重なるように、解け合って混ざり合って、1つになりたい。
それは叶わないと知っている。
そんな望みは声に出すことさえ許さない、と彼の薬指に光る指輪が告げている。

それでもいい。

( もう少し、このまま、 )

幸せに浸かっていたい。

暗闇のなかで心音をききながら、いまあるこの大きな幸せで窒息したかった。




『混沌とした世界で君の心音だけを信じてた』
窒息することも1つになることも、叶わないと知ってるんだ。