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古泉のボードゲームの誘いにのって、大した会話もなく淡々とコマを進めていると、作戦をねっている古泉の唇に目がいった。 考え事をしている時に唇を触るクセがあるらしい。今も真剣にボードを見ながら指でなぞるように、下唇に触れている。 「あんまり触るとカサカサになるぞ」 「え?あぁ、すみません、ついクセで」 考え事を続けながらどうでも良さそうに言う古泉の唇の端に、逆剥けを見つけた。 逆剥けとは何故にこうも剥きたくなるのか。指にしろ唇にしろ、痛いと分かっているのに剥いてしまうのは一体何故なんだ。 ああでもないこうでもない、とブツブツ呟きながらコマを動かしては止めてまた動かしてを繰り返す古泉の逆剥けに手を伸して、えい、と剥いた。 「いった!うぁ、血が出た」 「すまん。つい、な。しかしお前、いくら何でも長すぎるぞ。早くしろ、飽きる」 「酷いですよ」 微妙な顔でこちらを見てくる古泉の唇の端で、ぷくりと血の雫が光った。 それを見ていたら、まるで血が滲むように、頭にじわりと浮かんだ。 あの日、赤い丸になって目の前からゆるりと消えた――― ポケットティッシュを取り出した古泉からそれを奪い取って、ゴンと音がしそうな勢いで傷口を押さえる。 古泉がまた、痛い、と呻いた。すぐに、ティッシュに赤がじわりと広がる。 「お前、あか似合わないな」 何やら言いたい言葉がじわじわと頭の中に浮かんで仕方なかったので、一つだけ、その中で一つだけ、口に出す。 そしたらこいつは、古泉は、あの綺麗な声で、 「……泣きたいのは、こっちです」 そんなことを言って、分かった顔して、寂しそうに笑うものだから。 血が止まらないから。傷口を押さえるために伸している腕が疲れたから。まだ頭の中がごちゃごちゃしているから。 悔しいから。 ティッシュ越しに噛み付いた。 『彼に赤は似合わない。』 キョン>>><古泉、な感じで。 |