あなたと一緒にいたかった。
そばにいるのに、腕の中でそっと言ってみる。
顔を上げたらあなたはどんな目で僕を見るのだろう。



あなたと一緒にいたかった。
抱きしめあって、温度を分かち合っているのにそんなことを言われた。
それはどういう意味なんだ、と聞いていいのかいけないのか。



離れて、あなたの目を見た。
あなたの喉から言葉になり損ねた声が漏れた。
それが面白くて、僕は笑った。



喉が鳴ったら笑われた。
機嫌が良いんだろうな。こいつが離れて少し胸が寒い。
やっぱりあなたが好きですよ。なんて。
それは、その言葉の深い意味は考えていいのかいけないのか。


「俺もお前といたいんだがな」



それはどういう意味なのか、お互い聞かなかった。
あなたの手がほわんと温かくなる。
あなたは好きです。あなたを好きです。あなたが好きです。



「だからあなたといたいんです」



俺の手を両手で握るこいつの耳に赤が滲んだ。
一所懸命に堪えはするが、もしたまらなくなって齧り付いてしまったとしても。
仕方ないな、と笑って許してくれるだろうか。
伏せた睫毛が揺れている。気がつかなかった、そんなことで思い知るなんて。



「こんなにお前を好きだった」



『ある愛のはなし』
2人は、一年一ヶ月一週間一日一時間一分一秒をそれとなく大切に過ごしていてくれたら、もうそれでいい。