雨はいつか止むけど、雨が去った後の地面はそんなすぐには乾かないし、 そこにずかずか踏み込んだりなんてしたら、自分の足も汚れてしまうよ。
先輩は賢いから、こういう言い方でも分かるよね。

月を見上げながら、斉藤の声を聞いていた。
この壁の向こうにあいつは居る。すぐそこに居るのに。俺はここから動けない。

「俺には、分からん」

「分かるよ」

斉藤はもう一度、分かるよ、と言った。

分からないんじゃなくて、分かろうとしていないんだもの。
『分からない』って言葉で逃げてるんだよ。
潮江くん、悪い人だね。

優しく囁くような斉藤の声。その声が、言葉が、夜の暗闇に溶けた。



>>>