田村に言われてから、考えるようになった。 もう何もかも今さらだったが自分にとってあいつは何者だったのかを考えるようになった。 なったのだが、しかし何時も、決まって最後の締めは同じだった。

「また何日も寝ていないようだね」

寝不足で、寝不足で、寝不足で。無理やり動かしている頭と耳が拾った言葉。
腕に作った傷に薬を塗りこんでいる伊作が続けて言った。

「だからなのかな、お前が分かっていないのはさ」

「どういう意味だ」

「問おう。仙蔵のどこが好きだ。どこを、お前は好いているの」

「髪が、好きだ。長く美しい髪が、手が、好きだ。目が、口が、あいつが好きだ」

「そう」

棚から包帯を取って戻ってきた伊作が、また音もなく床に座る。

「なら、仙蔵と同じ姿をしている者は皆好きになるのかい」

「違う」

「そうだね、違うよね。それは分かっているのに、それが分かっているのに、どうしてお前は分からないんだろうね」

さらりさらりと包帯を巻いていく伊作の指が、少し、腕に食い込んだ。

「私は保険委員長だけれど、お前のそれは治せないな。塗る薬もないよ。救いようがない」

包帯の端を結んで、出来栄えに一つ頷いた。それから軽くぽんと叩いた。

「さあ出来た。膿まないように気をつけて」

捲っていた袖を下ろしながら伊作を見る。

「どっちもね」

ぱたんと薬箱を閉じる音が静かに、重く響いた。



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