木槌で釘を打ち込む音が空に響く。
今日は委員会長屋の雨漏り修理に、終わったら風呂場の点検と学園長先生の庵の障子を張り替えと、やることはたくさんある。
後輩が材料を持ってきてくれるので、ここの修理は予定よりも早くに済みそうだ。

「せんぱい、せんぱい」

しんべヱが、後ろから髷を控えめに引っ張った。

「こらしんべヱ、普通に呼びなさい」

「ひっぱりにくいから、ぼくは、前のがいいなぁ」

「……引っ張るんじゃありません。それで何だ、どうした」

「そうだ!えっと、なにかおしごとないですか!」

「おう、あるぞ。駄目になった釘を拾って、まとめておいてくれないか」

「はぁい!」

「せんぱい、ぼくも、ぼくも」

「こら喜三太、髪を引っ張らない。お前は板切れを集めて下に持っていくように」

「はーい!」

「作兵衛。これより大きい板が欲しいんだ。下に居る平太と一緒に、倉庫へ取りに行ってくれないか」

「はい、分かりました」

雲一つない良い天気の日に、一生懸命働いてくれる後輩と一緒に仕事をする。
これ以上の気分転換はない。


「よし、そろそろ休憩するか」

一段落がついたのでそう声をかけると、途端に飛び跳ねながらお茶やお菓子を用意しに梯子を降りていった。
ずっと屈んでいたせいで痛む腰を伸して、凝った肩を大きく回すと、屋根の上に腰を下ろして一息ついた。
今日もいい天気だ。温かな日差しと心地良い風に、つい眠くなる。
戻ってくるのを待ちながら、屋根の上に寝そべる。ああやっぱり気持ちがいい。

あれから一月。あれから、もうあっという間に一月がたった。
髪はあれからこまめにタカ丸に切ってもらっている。 タカ丸はその度に困ったように笑う。そんなつもりで言ったんじゃないよ。そう言って眉を寄せる。
分かっているよ、でも、そうしたいんだ。いつも心の中でそう答える。

あいつと会話をしないことにも慣れた。あいつを見ないことにも慣れた。
会話もしない、目をあわせない間に俺の気持ちは随分と落ち着いた。
あいつと仙蔵に謝らないといけない。俺一人で勝手に傷ついて、あの二人は何も悪くないのに。 しかも仙蔵にはあんなことを言わせてしまった。俺は嫌な奴だ。

次に会う機会があるのはいつだろうかと、今週の予定を思い浮かべた時だった。

「せんぱぁーい」

下に居る後輩の声がした。お客さんですよぅ。
屋根へ上がってきた奴を見て、俺の思考はぴたりと止まった。



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